吾輩は猫である

吾輩は猫である、というのをニンゲンの誰かが書いたと聞いておる。

【猫】というのは我のような姿形をした生物を一まとめにした物言いだそうな。

 

しかし、我は思うのだ。そのような物言いは不遜であると。

我は我のみであり、天にも地にも比する物のない唯一無二の存在である。

故に言う。

あんこはあんこである。

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我が家の下僕どもから捧げられた名ではあるが、我が姿を模した甘味の名とのことで気に入っておる。さすがは我が下僕どもと誉めておこう。

 

いま、ニンゲンの世では疫病が流行っておるそうじゃな。

我としても安寧の世を祈るものなので心を痛めておる。

同胞たちもニンゲンの健全な活動があってこそ、安心して生きていけるというもの。

終息することを祈るのみじゃ。

さて、つい最近まで我が家のオスの下僕が如何せん覇気がなかった。

どうやら【じぇいりーぐ】なる行事が疫病のせいで行われておらん事も影響しておったそうじゃ。

この【じぇいりーぐ】なる行事は【さっかー】という争いごと……ふむ【すぽーつ】という物のようじゃ。

大きな枠の中に玉を入れたり入れらりたりで一喜一憂するものというのは知っておる。

我も【いんたーねっと】とやらで見ておるのじゃ。

うちのオスの下僕がな、たいそう【じぇいりーぐ】が好きなようで、ニンゲンの尺度でいうところの週末とやらに意気揚々と朝から出かけて行っておった。

下僕であれば何時いかなる時も主の傍に控えておるべきではあるが、そこは我の度量というもの。下僕の娯楽ぐらいは大目に見ようではないか。

主たるもの、常に下々の者どもへ目を配らねばならぬ。

鞭だけでは下の者へ真なる忠誠は誓われない。

飴だけでは軽く見られてしまう。

その中庸こそが王者としての生きる道よ。

 

 

おっと、いかんな。話が外れてきておる。

あちこちに話が飛んでしまうのは我の癖じゃ、許せ。

 

そうそう【じぇいりーぐ】であったな。

どうやら再び動き出すと聞いておる。ムライなる者が八面六臂の活躍であったと【いんたーねっと】にあった。ニンゲンながら天晴である。

我が家のオスの下僕もここ数日は浮ついておるわ。

我が傍に四六時中おる日は、なにやら不要な物の整理や掃除や勉強など前向きに色々と取り組むようになった。善きかな、善きかな。

我が家の下僕しかニンゲンは知らぬが、どうやらニンゲンは娯楽があってこそ務めを果たせるようじゃ。オスの下僕は常々「待っているのは最高の週末だ!」と言っておる。

うむ、励むがよい。

 

しかし【じぇいりーぐ】というものは不思議じゃな。

【ら・りーが】や【ぷれみあ】というところでも同じ【すぽーつ】をやっており、我の目からしても【じぇいりーぐ】とは実力差が大きいように思える。

強き者こそ絶対であるのは世の真理。

それなのに、この【じぇいりーぐ】も負けず劣らずニンゲンの心を揺さぶっておるようじゃ。

走り、競い、時に勝ち、時に敗れ、倒れ、そして立ち上がる。

その姿にこそ、勝ち負けを超えた何かがあるのだろうな。

我ですら美しいと思える時がある。

オスの下僕は、その何かを見たくて【じぇいりーぐ】を見に行っているのやもしれぬな。 

下僕よ、もうしばし待つのだ。

貴様が大好きな【じぇいりーぐ】は、もうすぐ戻ってくる。

必ず戻ってくる。

 

 

……ぬ?

待て、尻の匂いを嗅ぐでない。

今は大事な話をしておるのじゃ。

やめろと申しておるだろう!やめんか!!

シャーーーーーーーーーーー!!!!

(なにか走り回る音)

 

 

※しばらくお待ちください

 

 

ふぅ。

あいや、すまぬ。

同居の者が構ってきておってな。

心根が悪い者ではないのだが、どうも馬が合わなくてな。

少し懲らしめてきたのじゃが、もう忘れておるようじゃ。

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話が途切れてしまったので、最後に1つだけニンゲンに伝えたい事がある。

ちゅーるじゃ。ちゅーるを我らに捧げよ。

さすれば、無限の癒しを与えん。

 

ではの。